僕の生まれ育った街は、その昔「台風銀座」の異名がありました。
だから子供の頃の台風は、夏恒例のイベントのように感じていました。
台風が来る日は、空がオレンジ色に染まります。
関東ではあまり見かけませんが九州の人だったら、あの台風の前のオレンジ色に染まる独特の空の色を、夏の風物詩のように感じているのではないでしょうか。
小さい頃、そろそろ台風が来るなぁと夕焼けとは違う橙色の空を見ながら、台風には赤い芯があると勝手に思っていました。
家の前の竹林が暴風に蹂躙されるのを雨戸の隙間からのぞきながら、ちぎれ飛ぶ雲のあいだに赤い台風の芯を探したことがあります。
季節はずれの大きな台風に身をちぢめながら、そんなことを思い出して描きました。
大人になった今、赤い芯も探さず、うず巻く風をのぞき見ることもなく、ただひたすら無事に通り過ぎてくれるのを待つようになりました。